杉並木
江戸時代に東海道をはじめとする諸国の街道が整備されて、街道の両側に木が植えられました。
浮世絵『東海道五十三次』でご覧のように、並木は松が一般的でした。夏の強い日差しには旅人に緑陰を与え、冬の吹き付ける風雪からも旅人を守りました。また、雪で道がわからなくなったときに路標の役も果たし、並木に沿って歩けば道に迷うこともありませんでした。
しかし、唱歌『箱根八里』で「天下の剣」と謳われた箱根の山の土は酸性で雨も多く、松の生育には適さず、箱根には杉が植えられたのです。
東海道は近代化で著しく姿が変わりました。同歌に「昼なお暗き」と形容された杉並木は、元箱根から恩賜箱根公園までの約500mにわたって、現在樹齢が350歳くらいの大樹が400本ほど残っています。
箱根宿を通るすべての人々、つまり参勤交代の大名行列、伊勢詣りの人々、僧侶、商人、奉公人、飛脚、馬子、駕籠かき、ヤジさんキタさん、並木を維持管理してきた地元の民などを、長きにわたって名実ともに見守ってきた杉並木に思いを馳せながら、是非お歩きください。
この記事を書いた人
案内人: 大森 裕子氏
米英25年の子育て海外生活で現地の方々との交流を通して日本の面白さに気づき、お話しする楽しさに目覚めて帰国後通訳ガイドに。
小田原城を築き、箱根神社にゆかりの祖先に導かれ箱根のご案内が最多。魅力溢れる箱根の自然、歴史、文化、人々をご紹介します。